研究テーマ->自動作曲->自動作曲と音楽スタイル->音楽スタイルのミックス(混合)と合成について  
  自動作曲システムの音楽スタイルのパラメータの操作について紹介します。
(自動作曲システムの音楽スタイルの操作は、米国在住のdoug smith氏の提案をベースに開発されています。)
 
音楽をジャンル分けする
音楽スタイルを幾つかあげて欲しいと言われた時、あなたは、どのような音楽スタイルをあげますか?「ロック」「ジャズ」のような大きな分類で名前をあげることも出来ますし、「ハードロック」「ブリティッシュロック」「AOR」など、小さな分類で名前をあげることも出来ます。
このような、数多くある音楽スタイルは、階層的に整理することが出来ます
音楽
クラシック
オーケストラ曲
ピアノ曲
室内楽
ポピュラー
ロック
AOR
ハードロック
ヘビメタ
バラード
ジャズ
ピアノトリオ
ビッグバンド
フュージョン  
ブルース  
民族音楽
インド音楽  
邦楽  
インドネシア音楽  
ハワイアン  
ただし、上の分類からもわかるように、各ジャンルは交錯していますから、厳密な基準で分類することは難しくなっています。
たとえば、上の分類で、バラードは、ロックに入れていますが、ジャズなどでもバラードの曲はありますから、このような意味で交錯しているわけです。
ACSでは、これらの音楽スタイルの曲を作曲するために、それぞれの音楽スタイルの特徴をパラメータ化しています。これらのパラメータには、音階、使用する楽器、伴奏パターンなど、数十種類のパラメータが用意されています。
2つの音楽スタイルをMixして、新しい音楽スタイルを作る
ACSには、音楽スタイルをMixする機能があります。パラメータが「音階」「リズム」「テンポ」「伴奏パターン」「メロディの楽器」「伴奏の楽器」の6つしかないと簡略化して、この機能を説明してみましょう。
(下記の考え方は、ACSの処理上の話ですので、一般的な音楽スタイルの話としてとらえると、頭が混乱しますので、注意してください。)
ACSのハードロックの音楽スタイルでは、たとえば、それぞれのパラメータが、下記のような形で定義されているわけです。
音階 ダイアトニックスケール(西洋の音階)
リズム 8ビート
テンポ 120(速い)
伴奏パターン ギターのストローク
メロディの楽器 ボーカル
伴奏の楽器 ディストーション・ギター
一方、AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)の音楽スタイルでは、下記のような形で定義されているわけです。
音階 ダイアトニックスケール
リズム 8ビート
テンポ 80(遅い)
伴奏パターン ギターのアルペジオ
メロディの楽器 ボーカル
伴奏の楽器 アコースティック・ギター
ハードロックとAORの音楽スタイルをMixするために、下記の処理をプログラム内で行い新しい音楽スタイルを生成します。
1 共通部分はそのまま残す ハードロックとAORのMixの場合は、「ダイアトニックスケール」「8ビート」「ボーカル」を残します。
2 差異がある部分で、値が連続的に変化するパラメータの場合は、2つの音楽スタイルの中間のどこかから値を選ぶ ハードロックとAORのMixの場合は、テンポは、連続的に変化する値ですから、「80」と「120」の間にある値を何か選びます。たとえば、90や、110などの値が選ばれるわけです。
3 差異がある部分で、値が連続的に変化しないパラメータの場合は、2つの音楽スタイルのいずれかの値を選ぶ ハードロックとAORのMixの場合は、「伴奏パターン」は、「ギターのストローク」か「ギターのアルペジオ」のいずれかを、「伴奏の楽器」は、「ディストーション・ギター」か、「アコースティック・ギター」のいずれかを選びます。
このような処理の結果、たとえば、次のような音楽スタイルが生み出されます。
音階 ダイアトニックスケール
リズム 8ビート
テンポ 90
伴奏パターン ギターのアルペジオ
メロディの楽器 ボーカル
伴奏の楽器 ディストーション・ギター
これは、ハードロックよりはテンポの遅い、柔らかな感じの伴奏の音楽スタイルになっていることが分かります。AORと比べれば、すこしテンポの速い、パンチの効いた音色の音楽スタイルになっています。
音楽スタイルの分解
音楽スタイルのMixで説明した処理をもう少し大きな指定から整理してみましょう。音楽スタイルの階層構造では、ハードロック、AORは、下記のように分類されています。
音楽
クラシック
オーケストラ曲
ピアノ曲
室内楽
ポピュラー
ロック
AOR
ハードロック
ヘビメタ
バラード
ジャズ
ピアノトリオ
ビッグバンド
フュージョン  
ブルース  
民族音楽
インド音楽  
邦楽  
インドネシア音楽  
ハワイアン  
から、AORとハードロックは、両方ともロックの特徴を兼ね備えていることがわかります。「音階」「リズム」「テンポ」「伴奏パターン」メロディの楽器」「伴奏の楽器」のつのうち、共通していたパラメータの値は、「ダイアトニックスケール」「8ビート」「ボーカル」でしたから、「音階」「リズム」「メロディの楽器」は、ロックに共通のパラメータということが分かります。
AORの音楽スタイルは、下のように分解することができます。
   AORの音楽スタイル = ロックに共通のパラメータ  AOR独自のパラメータ
ハードロックの音楽スタイルは、下のように分解することができます。
   ハードロックの音楽スタイル = ロックに共通のパラメータ  ハードロック独自のパラメータ
さらに分解をすすめると、AORの音楽スタイルは、下のように分解することができます。
   AORの音楽スタイル = ポピュラー音楽に共通のパラメータ  ロックに共通のパラメータ  AOR独自のパラメータ
ここで、新たに、ジャズに含まれる音楽スタイルについて考えてみましょう。
ビッグバンドの音楽スタイルを、少々強引ですが、下記のようなパラメータで定義します。
音階 ダイアトニックスケール
リズム シャッフル
テンポ 90
伴奏パターン ギターのストローク
メロディの楽器 アルトサックス
伴奏の楽器 エレキギター(音にひずみが無いもの)
ビッグバンドの音楽スタイルは、下のように分解することができます。
   ビッグバンドの音楽スタイル = ポピュラー音楽に共通のパラメータ  ジャズに共通のパラメータ  ビッグバンド独自のパラメータ
AOR、ハードロック、ビッグバンドに共通のパラメータは、「ダイアトニックスケール(西洋の音階)」
すから、これが、ポピュラー音楽に共通のパラメータになります。
AORの音楽スタイルの場合で、パラメータとの関係をまとめると、下記のようになります。
ポピュラー音楽に共通のパラメータ
音階 ダイアトニックスケール
ロックに共通のパラメータ
リズム 8ビート
AOR独自のパラメータ
テンポ 80
伴奏パターン ギターのアルペジオ
メロディの楽器 ボーカル
伴奏の楽器 アコースティック・ギター
3つの音楽スタイルから新しい音楽スタイルを作る
音楽スタイルのMixでは、2つの音楽をMixしましたが、今度は、3つの音楽スタイルを使用して、新しい音楽スタイルを作り出すということを考えます。
ACSには、2つの音楽スタイルの共通部分や差異部分を抜き出して別の音楽スタイルにインポートする「Import Common」と「Import Variance」という2つの機能があります。
2つの音楽スタイルの共通部分を抜き出して別の音楽スタイルにインポートする「Import Common」では、A,B,Cという3つの音楽スタイルに対して、次の処理を行います。
1 A,Bの2つの音楽スタイルの共通部分を抜き出す
2 抜き出した共通部分をCの音楽スタイルに流し込む
AOR、ハードロック、ビッグバンドの3つの音楽スタイルで具体的に考えると、次のようになります。
1 AOR、ハードロックの2つの音楽スタイルの共通部分を抜き出す 「ダイアトニックスケール」「8ビート」「ボーカル」が抜き出されます。
2 抜き出した共通部分をビッグバンドの音楽スタイルに流し込む 結果として、「ダイアトニックスケール」「8ビート」「90」「ギターのストローク」「ボーカル」「エレキギター」というパラメータの構成になります。
音階 ダイアトニックスケール
リズム 8ビート
テンポ 90
伴奏パターン ギターのストローク
メロディの楽器 ボーカル
伴奏の楽器 エレキギタ
上記の処理の結果下記のような音楽スタイルを作り出すことになります。
   新しい音楽スタイル = ポピュラー音楽に共通のパラメータ  ロックに共通のパラメータ  ビッグバンド独自のパラメータ
上記の例では、出来たパラメータは、あまり、パッとしない感じですが、「ロックに共通のパラメータに、ビッグバンド独自のパラメータを乗せた音楽スタイル」という、興味深い構成になっているのです。
同様に、2つの音楽スタイルから異なる部分を抜き出し、それを3つ目の音楽スタイルに流し込むことによっても、新しい音楽スタイルを作成することが可能です。2つの音楽スタイルの差異部分を抜き出して別の音楽スタイルにインポートする「Import Variance」では、A,B,Cという3つの音楽スタイルに対して、次の処理を行います。
1 Aの音楽スタイルの中から、Bの音楽スタイルと異なる部分を抜き出す
2 抜き出した異なる部分をCの音楽スタイルに流し込む
AOR、ハードロック、ビッグバンドの音楽スタイルで具体的に考えると、次のようになります。
1 AORの中からハードロックの2つの音楽スタイルの異なる部分を抜き出す 「80」「ギターのアルペジオ」「アコースティック・ギター」が抜き出されます。
2 抜き出した異なる部分をビッグバンドの音楽スタイルに流し込む 結果として、「ダイアトニックスケール」「シャッフル」「80」「ギターのアルペジオ」「アルト・サックス」「アコースティック・ギター」というパラメータの構成になります。
音階 ダイアトニックスケール
リズム シャッフル
テンポ 80
伴奏パターン ギターのアルペジオ
メロディの楽器 アルト・サックス
伴奏の楽器 アコースティック・ギター
上記の処理の結果下記のような音楽スタイルを作り出すことになります。
   新しい音楽スタイル = ポピュラー音楽に共通のパラメータ  ジャズに共通のパラメータ  AOR独自のパラメータ
今後の可能性
Mixやインポートの操作で、Mixやインポートする量を%で指定するようなことを考えています。